ジョン・メイブリィ監督『リメンバランス――記憶の高速スキャン』(監督インタヴュー) (『アサヒカメラ』1996年2月号、朝日新聞社刊) |
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デレク・ジャーマンの没後、彼の影響下にある映像作家たちの動向が注目されているが、その「直系」ともいうべきジョン・メイブリィ監督のヴィデオ映画作品『リメンバランス――記憶の高速スキャン』(93年)が公開された。 3人のクィア(女装のゲイ)たちが自分の過去の出来事についての記憶を語っていく。さらに2人の俳優によるナレーションとニューズ番組のパスティーシュ、結びつきを欠いたさまざまな映像が挿入される。それらはイメージが圧縮され歪められたかのようなエフェクト処理を施されたうえに、幾度となく分断され、執拗な反復にさらされる。過剰な情報をスペクタクルとして消費するこの時代のさまざまな映像が剽窃され、カットアップされるのだ。「本当の話、嘘の映像」という秀逸なキャッチコピーは、端的にこの作品のコンセプトを物語っている。 「TV の報道などでは、本当にあった人間の悲劇があたかもフィクションのように扱われていく。『リメンバランス』のなかでは主題のひとつとしてエイズや HIV、またサブテクストとして人間に対する侵略というものを扱っています。それらは現実では異なったかたちで現れてきますが、それをこの作品のなかでは描いています」 彼は70年代後半にインディペンデント・フィルムメイカーとしてロンドンのパンク/ニューウェイヴ・シーンの撮影を始め、デレク・ジャーマンに才能を見いだされた。その後は多くのジャーマン作品の製作に参加した経歴を持つ。 「デレクからは何をすべきだ、ということよりも、何をしないほうがよいという、かたちでいろいろ学んだような気がする」と、笑いながら語る。 個人のあり方そのものが「現実」の社会や政治に鋭く対峙しており、そのことにつねに自覚的でありながら、電子的なテクノロジーと手法を用いてそれを表現する。カウンター・ドキュメンタリーとでもいうべき新しい映像表現の旗手の出現だろう。 |
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監督『リメンバランス――記憶の高速スキャン』 1993年/イギリス/カラー/60分/配給:アップリンク |
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John MAYBURY(ジョン・メイブリィ)氏はイギリスの映画監督/画家。 デレク・ジャーマンに見いだされ、インディペンデント映画界で活躍。80年代後半には MTV のミュージック・ヴィデオを数多く手がけて一躍有名になった。『リメンバランス』で94年ベルリン映画祭テディ・ベア賞受賞。 |