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「ダムタイプ S/N プロジェクト 1997 ――ベッドタイム・ストーリーズ」レポート
(『アサヒカメラ』1997年7月号、朝日新聞社刊)
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S/N プロジェクト:1984年結成され、京都を中心に活動を続けるアート・グループ「ダムタイプ」による作品「S/N」は、エイズをめぐる「問題」、個人と社会、愛と性、生と死といった様々な主題を身体表現、映像、音響、言語、照明効果を総合した革新的なパフォーマンス。1994−96年まで各国で上演され、インスタレーション作品や印刷物、CD 等のほか、そこでの様々な議論が「S/N プロジェクト」として現在も継続されている。

5月3日から5日にかけての3日間、高知県立美術館で「ダムタイプ S/N プロジェクト 1997 ――ベッドタイム・ストーリーズ」が開催された。
 これは、フランスで新作公演の準備を進めていたダムタイプに美術館側がはたらきかけ、京都のエイズ・ポスター・プロジェクト(APP)、ウーマンズ・ダイアリー・プロジェクトとの共同企画によって実現したもので、パフォーマンス作品「S/N」のヴィデオ上映とゲストを招いてのセミナーショー、ワークショップ、世界各国から集められたエイズ・ポスターの展示等によって構成された。
 この企画の一連のプログラムでは、日常生活での経験を語ること、「表現」をめぐる問題、そしてポスターやマスメディア等によって一般に流布しているイメージの潜在/顕在的なメッセージの分析に至るまで、さまざまなレヴェルでの出来事に焦点が当てられた。その内容は多岐にわたるが、そのすべてに通底するものに自己/他者を表象することをどう捉えるのか、といった問いがあったように思える(唐突だが、ニコラス・ニクソンの「People with AIDSエイズとともに生きる人々]」を思い出してみればいい。この作品は、「写真家と被写体の信頼関係」や「人間の真実を描き出した」ものとして絶賛されたが、当の PWA たちによって「PWA=死にゆく人々」というステレオタイプのイメージを再生産するものだとして批判された。そこにどのような合意がなされようと、写す−写されるという関係は一つの権力的な関係なのだ)
 まして、無数の実体化されたフィクションの表象(「民族」「国家」「性別」etc.)が疑いなく信じられるとき、それがいかなる排除と差別、そして抑圧を生み出しているのかは言うまでもない。
 APP の制作によるスライドショー「SAFER SEXY」は、これまでいくつかの教育現場等で上映されてきた一種の「性教育」教材だが、日常生活のスナップ写真と「エイズ啓発」を目的につくられた(とされている)イメージ、さらに言葉によるメッセージを対置させ、「私たち」のこの社会で無意識のうちに蔓延する差別や偏見に注意を促すものだった。
 「S/N」という作品を媒介に、その主題を変奏させた今回の共同作業は、自己と他者とのかかわりのなかから、新たな「関係」をつくりだそうとする試みなのだ。