鈴木理策 (『文藝別冊 J-フォトグラファー』[J-フォトグラファーズ・ファイル]、2000年、河出書房新社刊) |
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彼の(すくなくとも資料で確認できる)最初の個展タイトルが「True Fiction」であったことは興味深い。最近の二冊の写真集(『KUMANO』、『PILES OF TIME』)へと結実する彼の作品に一貫してみられるのは、現実そのものを記録することではなく、写真的リアリティの提示によって私たちの信じる「現実」なるものがいかにしてフィクショナルな基盤を要請しているのかを明らかにするものだからである。その意味で、彼は正統なポスト・モダニストたらんとしているのではないだろうか。彼がとりあげるモチーフが、恐山や熊野といった霊性を強く帯びた土地であることは、その立場をより強固なものにしている。それらはたんなる「霊蹟巡り」ではなく、伝統的な意味では失われつつあるが、そのつど捏造される「信仰」(それは私たちの日々の日常そのものでもあるだろう)への私たちの意識をゆるやかに喚起するものなのだから。
そうした「現実」の構造を可視化することから、彼が次にどのような「その先」のヴィジョンを構築していくのか。それこそを期待したい。 |