「いま写真がブーム」と云わんばかりのマス・メディアの喧噪の一方で、けっして寡作ではないものの、出版物での発表に恵まれることの少ないのがシリアスな写真家たちの一般的な状況である。96年に「ON THE STREET, OSAKA」で準太陽賞を受賞した元田敬三もまた、そうした一人だろう。ヒューマン・インタレストを最大限に発揮させるスナップショットで、ときにあまりにも優しくナイーヴに映りもするが、臆することなく正面から「人」と対峙し、そこに何らかの関係性を見出そうとする果敢さを常とする彼の写真は、もっと人目に触れられて然るべきではないだろうか（とはいえ筆者もこれまで、そうした彼の発表を観る機会を逸してきたので大きなことは言えないが）。
　『Contemporary Remix“万葉集”』の第一巻（これにはほかに中川貴司、屋敷雅英、常山恵未など、地道だが注目すべき写真家が多数収められている）は、編集こそ最低であるものの、そうした彼の作品が収録されている。願わくば、もっときちんとしたかたちでこうした写真に触れる機会が日常とならんことを。